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                第一章

              始まりは雨の中で

 

 

 その日、朝から降り出した雨は放課後になっても止むことはなかった。
 まるで梅雨時期の雨みたく、この季節にしては生暖かいじとっとした空気が肌を湿らす。
 こういう雨は一般的に好まれてないと思う。私にとっても嫌いな雨だ。といっても私の場合、別にびしょびしょになるのが嫌だからとかじゃなく―
 「せっかく時間もかけたのに」
 そう。髪の毛のオシャレが意味を失くすからである
 本当にこういう日はストレートの人が羨ましく思う。くせ毛の人は大抵同じ事を一度ぐらいは思ったことがあるはずだ。と、勝手に思ってるだけなんだけど。
 放課後には抑えていた髪の毛がくねっと跳ねていた。
 あまり酷いくせっ毛ではないにしろやっぱり決めた髪形が崩れるのはショックを受ける。
 「凌ちゃん」
 教室から雨空を見ている私がそんなに気になったのか
 「なにしてるの?」
 一人の女の子が話しかけてきた。
 「雨とにらっめこ」
 私は冗談交じりそう答えると彼女は小さく笑った。
 「綾ちゃん面白いね」
 彼女は私の隣の席の『大林花菜』 このクラスの委員長を務めている。

 彼女の髪はクセ毛など一生縁がない綺麗な髪質を持っている。
 「花菜はいいよね、ストレートで」
 私はちょっと嫌味っぽく言った。
 「そうでもないよ。フワフワ感がないから一歩間違えるとホラー映画のお化けみたいになっちゃうし」
 「ああ貞○ね。なんか想像付くわ
 「ひどっ!! 私はそんなじゃないもん」
 この高校に通いだして週間。それなりに学校にも慣れ、クラスメイトとも仲良くなってきた。今話してる花菜ともよく昼飯を一緒に食べている一人である。
 「そっか。綾ちゃん、くせ毛だもんね」
 「ほんとに。この後写真のモデルをやるのにこれじゃまったく可愛くないわ」
 「でも私は結構そのくねくね頭好きだけどな」
 「それはどうも、あ・り・が・と」
 私は満面の笑みと嫌味を込めてお礼を言ってやった。花菜は私の態度に気付いているがまったく気にしないところがこの子の性格を主張している。ほんとに一緒にいて飽きないわ。
 そんな私と花菜がお喋りしていると教室の入口から首にデジカメを吊るしたショートカットの女の子がそれまた満面の笑顔で近寄ってきた。
 これもまた一味違う雰囲気を持っている。
 背が小さく傍から見たら同じ高校生とは見えない(幼児体型)し、でも元気いっぱい誰に対しても壁を作らない。だから男女問わず人気がある。そのせいか校内で彼女が写真を撮っていても誰からも注意されること無い。
 まあなぜ転入から週間しか経ってない私が彼女の事を知っていると言うと・・・・・・それは初めての出会いがその写真によるものだったからなのだ。

 

 転入から日後の放課後。その日、花菜は図書館に本を返しに行くので一緒に付いてきてほしいとメールを送ってきた。

 私もまだこの辺を詳しくないので断わる理由も無いし、なんといっても私に最初に接してくれた友達ある花菜と一緒にいるのはとても楽しかった。なので、すぐOKとメールを返した。

 学校が終わり私と花菜は学校から少し離れた図書館へと足を進めた。歩き出して十分ぐらいだったろうか。ある角から突然光が目の前を走った。

 その光は回ではなく何度もその角から飛び出してきた。不思議に思った私と花菜はその角を覗いてみた。そこには小さい少女がある一点にカメラを構えて立っていた。

 カメラが指す方向には一匹の猫が座ってい。不思議な事にどれだけ少女が近寄ってもその猫は逃げようともしなかった。

 「まな~、いい子だね。その顔キュートだね~」

 少女はその猫と会話でもするように近寄りながら写真を撮っていた。

 よく見るとその少女が着ている服はうちと同じ学校の制服だった。てことは私と同じ高校生・・・・・・には見えないけど。

 少女はこっちの視線に気づいたのか、猫とお別れをしてこっちに走ってきた。

 「やほ~、はなちん。居るなら声かけてくれればいいのに」

 そう少女は花菜に話しかけてきた。

 「すごく楽しそうだったから、邪魔するのもあれかなっとおもって」

 「むぅ~、そんな気を遣わなくていいのに~」

 少女は私の存在に気付いてないふりをしているのか黙々と花菜と話をしてい。と思ったら突然こっちの方を向いて

 「君が転校生だね。初めまして、私は花菜の幼馴染で宮瀬春海っていいます。よろしく」

 いきなりの自己紹介に一瞬だったが呆気にとられてしまった。

 「え、あっ、初めまして。中神綾です」

 どうやら少女・・・・・・いや、彼女はこんな小中学生に見えても私達と同じ高校生でうちの写真部に所属。そしてよく見る学内の廊下に飾ってあるコンテスト受賞作品を撮ったのがこの彼女だと花菜が教えてくれた。

 でも彼女に言わせると、別に賞が欲しいから撮っているわけではなく、自分は写真が好きで、撮られた人やそれを見てくれた人が幸せになってくれればそれでいいの。と言っていた。

 そう言われればさっきの猫といい、今一緒に図書館に向かっている最中にすれ違った運動部の子たちも皆、彼女と会うと笑顔を返していた。どうやら彼女にはそういう不思議な雰囲気を持っているんだろうと、初めてあったばかりの私でも感じてしまった。

 

 図書館に本を返し終え帰っている途中

 「ねえ、綾ちゃん。今度モデルやってみる気ない?」

 ぴょんと、彼女は私の前に立ちカメラを向けた。

 話を聞いてみるとどうやら今の景色と一緒に人間模様を撮ってみたいと思ったらしく、だけど中々その雰囲気を出せる人が見つからなかったとの事

 丁度そんな時に偶然私が現れたらしい。

 別に写真に撮られるのは苦手ではないけど、あまりに急な事なので少し考える時間を貰って今日中に返事をするね。と返し、携帯番号とメアドを交換して別れた。

 結局、彼女に嫌な印象は無かったのでその日の内に、モデルの件OKです。と返事をした。までは良かったのだけど・・・・・・

 

 それからニ日後の放課後―


 

 私は外の雨を恨む今に至っていた。

 

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